映画やドラマ、アニメのロケ地の聖地巡礼は持続可能なのか

映画やドラマのロケ地となることで、その地域の観光客や移住者、交流人口を増やそうという試みがあります。世界的にもニューヨークやベネチア、マルタ島など著名な観光地では、積極的にロケの受け入れをおこなっていますが、国内もその例外ではありません。福岡県北九州市が映画の街として脚光を浴びはじめてからもう15年以上経ちますし、昨今では千葉県茂原市や神奈川県綾瀬市、長崎県島原市なども積極的なロケ受け入れをおこなっています。
ちなみに私の出身地の愛知県豊橋市も、かつてはロケはそこまで多くなかったですが、ここ15年で受け入れ態勢が整い、特に地元のエキストラ協力などをあおげることから、直近ではTBSの「VIVANT」などのロケ地として選ばれています。その結果、地元市民の地元愛に火をつけたり、ロケ地となった場所が「聖地」となって来客数が増加するなどの経済効果も産まれていると聞きます。

経済効果があるということは、とても喜ばしい反面、その効果がいつまで持続するのかという疑問も発生することでしょう。映画やドラマの放送中は観光客が訪れても、放送終了後には、ロケ地なんぞ誰も見向きもしなくなるのではないか、という疑問です。

そんな中、先日訪れた石川県で大きな発見がありました。

それは、実写のドラマではないのですが、アニメの取組です。

たまたまのと鉄道に乗ってみたら、そののと鉄道の車両がアニメのラッピング車両でした。そして、その車両を見て歓喜している集団がいるのです! これはアニメファンの聖地巡礼だと確信した私は、その場でそのアニメを調べてみました。
そのアニメの名前は「花咲くいろは」。
はじめて聞いた名前でしたが、これだけ歓喜している人たちがいるということは人気アニメなのでしょう。私も見てみようかなと思ったそのとき、驚く発見がありました。それは、このアニメの放送年が10年以上前だったということです。
テレビアニメは2011年、映画版は2013年放映だそうです。
10年以上前の作品なのに、アニメファンが聖地巡礼しているとは! とても驚きました。


↑ラッピング車両を背景に記念撮影している人たち(おそらく、アニメファンが撮影しているのに便乗してよくわからないまま撮影している観光客も含まれる)

なお、あとで分かったことですが、この日はたまたま、アニメ「花咲くいろは」をきっかけに始まったお祭り「ぼんぼり祭り」の開催日だったそうです。つまり、聖地巡礼にはドンピシャな日だったのです。
なので、通年で「花咲くいろは」のファンが石川県に訪れているわけではないかもしれません。しかし、放送から10年以上経ってもファンが訪れていることは事実です。北國新聞の記事を読むと海外からの誘客もできているようですし、実際に私も、車両を見て歓声を上げている外国からの観光客らしき方を見かけました。これは、アニメの聖地となったことをきっかけにしっかりと「お祭り」に昇華させた地元の功績でしょう。

ナイトツーリズムに詳しい木曽さんは、このようにおっしゃっていますが、たしかにガルパンの大洗に比べたら、花咲くいろはの石川県の観光流入数は知れた数かもしれません。しかし規模が小さくとも持続的に観光客を誘致したり関係人口を維持することが出来ているとしたら、これはひとつの成果ではないでしょうか。

ちなみに、石川県の能登地方では、花咲くいろは以外にもアニメファンの聖地巡礼が起こり得る土壌があります。

例えば今年で言えば、アニメにもなったり実写映画にもなった「君は放課後インソムニア」のロケ地(舞台)が石川県七尾市です。地元ではロケ地マップを5,000枚擦ったそうですが、すぐに在庫がはけてしまい、メルカリに出品される騒ぎにまでなったと七尾市の方からうかがいました。私は実写映画のほうしか見ていないのですが、七尾市の風景がとても美しく描かれており、これは現地に行きたくなる! と思いました。(実際に行きました!)

さらに現在も進行中のアニメ・漫画でいうと、「スキップとローファー」でしょう。
舞台は東京のこの作品ですが、主人公の地元は石川県珠洲市の蛸島町がモデルです。珠洲市の中心地にあるラポルトすずに立ち寄ったところ、スキップとローファーの登場人物の等身大パネルも飾られていました。
「スキップとローファー」の中でも、珠洲市蛸島町はとても印象的に描かれており、こちらも聖地巡礼者が続々と発生するのではないかと思われます。

さらに直近の話題でいえば、漫画「暗号学園のいろは」でしょう。
「暗号学園のいろは」のキャンペーンで、読者に暗号解読をおこなってもらうという取組が先日ありました。
その最後の問題の答えの目的地が、石川県珠洲市の「いろは書店」だったのです。

そのため、通称「暗号兵」と呼ばれる暗号解読の読者が急に「いろは書店」に押しかけたとのこと。私も興味本位でそのあといろは書店に行ってみましたが、店員さんから「暗号兵ですか?」と聞かれました。せっかくいろは書店に来たのに何も買わないのも申し訳ないので、その場で書籍を大量購入しました。こうやって経済効果が産まれるのです。

「君は放課後インソムニア」「スキップとローファー」「暗号学園のいろは」、さまざまな作品がありますが、これらの聖地が一過性で終わるのか、息が長く続くのか、とても見ものです。