生成AIでアプリを作ろうとしたけど途中で手が止まった会社の話(実話)

先日、弊社のブログ記事「中小企業のAI活用方法紹介・旅行精算アプリを作ってみた」で、Claude Codeでバイブコーディングしてアプリを作る方法を紹介しました。日本語で指示を出すだけで十数分で動くアプリが完成する――その手軽さに注目が集まっているのは確かです。

しかし、その一方でこんな事例もありました。(取引先から掲載許可を頂きましたので内容をぼかしつつ書いてみます。)

Claudeスマホアプリによる挑戦

弊社取引先が、「Claudeでアプリを作れるなら」と挑戦を始めました。ただ、ここで使ったのはClaude Codeではなく、iPhoneアプリ版のClaudeでした。しかも作ろうとしたのはWebアプリです。

フロント側(見た目や操作画面)はClaudeがしっかりとHTMLを生成してくれました。動いているように見える。画面もそこそこキレイ。これはいけるかも……と誰もが思ったそうです。

サーバーの壁が立ちはだかる

しかし、実際に「使えるアプリ」にする段階になって、大きな壁にぶつかりました。

サーバー側の知識がない。

一言で言うとこれです。フロントはClaudeが作ってくれた。でも、そのデータをどこに保存するのか? どうやってサーバーに上げるのか? データベースって何をどう設定すればいいのか?

いくらClaudeがコードを書いてくれても、サーバーをどう用意するか、どう設定するかは、AIだけでは解決できないんです。少なくとも現時点では。

デプロイをお手伝い

そこで弊社が入り、最後の仕上げ(デプロイ)をサポートしました。

今回取った方法はこうです。

  • フロント側:Claudeが生成したHTMLを活用

  • サーバー側:Google Apps Script(GAS)でWebアプリを作成

  • データ保存先:スプレッドシートにデータを蓄積

  • ホスティング:取引先が契約している安価なレンタルサーバーにHTMLをアップロード

アクセス数が多くないアプリだったので、無料範囲内で十分運用できる形にまとめました。

つまり、Claudeに「サーバー側も丸ごと作ってもらう」のではなく、人間がアーキテクチャを決めて、実装の一部をAIに任せるという形です。

メンテナンス性の欠如

サーバー問題は何とか解決しましたが、実際に動かしてみてもっと根本的な課題が見えてきました。

それは、変更に強い作りになっていないということです。

通常、IT屋さんがアプリを作るときは「この項目は後で変わるかもしれないな」という予測を立てて設計します。承認者が変わるかもしれない。従業員が増えるかもしれない。ステータスが追加されるかもしれない。

でも、ITの知識がない人が今必要な機能だけをAIに指示して作ると、そういう拡張性やメンテナンス性を考慮した設計がまったくできていません。

具体例で考えてみましょう

例えば、従業員の経費申請アプリを作ったとします。

  • 今いる従業員だけを固定でリストにした

  • 承認者は「今の上司」でベタ書きした

  • 経費項目も「今必要なもの」だけを列挙した

するとどうなるか?

半年後、新しい従業員が入社したら? 上司が変わったら? 新しい経費カテゴリが追加されたら?

アプリが使い物にならなくなるんです。そしてゼロから作り直しということになりかねません。

しかし、今回弊社がお手伝いしたことで、こうした問題を解決する設計を追加しました。具体的には、従業員の追加・削除や経費科目の追加・削除を、ユーザー自身(運用者)がブラウザ上でできるようにしました。さらに、こうした管理作業は特定の管理職だけに許可するという権限管理設定も実装しています。つまり、IT技術者を呼ばなくても、現場の人が日々の運用の中でアプリを育てていける仕組みにしたわけです。

こういう時間経過とともに変化するものを想定した設計は、Claudeに「変更に対応できる設計にしてね」と指示すればできないことはありません。でも、その指示を出すこと自体が、IT知識がないと難しいんですよね。今回は弊社が入ったからこそ、このような拡張性を実現できました。

バイブコーディングの現在地

今回の事例を通じて感じたのは、以下のようなことです。

AIが得意なこと

  • フロントエンドのコード生成

  • 決まった仕様の中での実装

  • プロトタイプの高速作成

人間(特にIT知識がある人)が必要なこと

  • サーバー構成・デプロイ

  • データベース設計

  • 変更可能性を考慮した仕様策定

  • メンテナンス性を確保する設計判断

  • 権限管理や運用フローを見据えた機能設計

つまり、なんとなく動くことと実際に業務で使えることの間には、まだまだ大きなギャップがあるということです。

これからの展望

バイブコーディング自体は、まだ過渡期にあると思います。これからどんどん進化していくでしょう。

Claude CodeなりCodexなりを使えば十数分でアプリのプロトタイプが作れるのも事実です。しかし、そのアプリを実際に業務で運用するとなると、今回のような課題が立ちはだかります。

以下のようなことができれば、非IT系の会社でもバンバン活用できる時代が来るかもしれません。

  • 仕様策定をAIがサポートできるようになる

  • 変更に強い設計を自動で提案してくれる

  • サーバー設定やデプロイも含めてワンストップで解決できる

  • 権限管理やデータのライフサイクルまで意識した設計をAIが提案してくれる

それまでは、IT技術者の力が必要な領域はまだまだ大きいというのが私の実感です。

まとめ

今回の話をまとめると、こんな感じです。

  1. バイブコーディングでフロントは確かに簡単に作れる――Claude Codeを使えば十数分でプロトタイプが完成する

  2. しかしサーバー・データベースの壁は依然として高い――今回の取引先のように、Claudeのスマホアプリではその先が困難だった

  3. メンテナンス性・変更可能性の考慮が抜け落ちがち――IT知識がないとその発想自体が生まれない

  4. 仕様策定や設計には人間のIT知識がまだまだ必要。特に権限管理や運用中の変更を見越した設計は、AIだけに任せるのはまだ難しい

  5. だからこそ、AIを活用できるIT技術者の価値が高まっている

「AIでアプリが簡単に作れるようになったから、もうエンジニアはいらない」なんてことは、少なくとも今はありません。むしろ、AIを使いこなせるエンジニアの価値が高まっていると感じます。

弊社としても、どうやったらバイブコーディングをうまく使いこなせるのか、引き続き追いかけていきたいと思います。

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