生成AIで業務効率化は本当に誰でもできるのか?中小企業に必要な役割分担

これまでこのブログでは、生成AIを活用した業務効率化の事例をいくつか紹介してきました。旅行精算アプリをバイブコーディングで作った話、Notion+Claudeで会計システムを組んだ話、RPAの仕組みを生成AIに書かせた話、そしてアプリを作ろうとしたけど途中で手が止まった話。

どの記事にも共通しているのは、生成AIを使えば確かにいろいろなことができるようになったということです。数年前なら開発会社に何十万、何百万円も払って依頼していたようなことが、AIへの指示ひとつで形になる時代が来ています。

でも、今回はあえて少し違う角度から書いてみます。「それって本当に誰でもできるの?」という話です。

AIでアプリを作れても、使えない

前回の記事で紹介した、取引先がClaudeでアプリを作ろうとして途中で止まってしまった事例。あの話の本質は、サーバーの知識がなかったとか、メンテナンス性が欠けていたとか、そういう個別の技術的な話ではありません。

もっと根本的な問題は、前提知識がないと、何を指示すればいいのかがわからないということです。

生成AIは、聞かれたことには答えてくれます。指示されたことは実行してくれます。しかし何を聞くべきか、何を指示すべきかは、人間が考えなければなりません。

例えば会計システムの事例では、「立替経費精算が多いからそれを重視した設計にして」「部門別会計もやりたい」といった要件をプロンプトに盛り込みました。RPAの事例では、「AIに直接GUIを操作させるのではなく、Pythonコードを書かせてそれを実行する」というアプローチを選択しました。

こうした判断は、業務フローへの理解やITの基礎知識があって初めてできることです。生成AIがいくら賢くなっても、そもそも何が必要なのかを考える部分は、まだ人間の仕事なのです。

AIで作る人とAIを使う人を分けて考える

生成AIを業務に取り入れること自体は、もはや避けて通れない流れだと思います。競合がAIで効率化している中、自社だけ手作業を続けるのは、コスト面でもスピード面でも不利になっていく一方です。ただし、だからといって、社員全員がAIでアプリを作れるようになりましょうという話ではありません。大事なのは、作ることと使うことを分けて考えることです。

アプリを作ったり、業務の仕組みをAIで設計したりする部分――これには前提知識が必要です。サーバーのこと、データベースのこと、セキュリティのこと、将来の変更に耐えられる設計のこと。これらを全社員に求めるのは現実的ではありません。

一方で、出来上がった仕組みを使うだけなら、特別な知識はいりません。会計システムの事例でいえば、「4月13日、A子が電車代580円を立替。〇〇部門。」と日本語で入力するだけ。複式簿記の知識は不要でした。

つまり、基盤となる仕組みを作る人と、その仕組みを使う人。この役割分担をはっきりさせることが、中小企業のAI活用における最大のポイントだと考えています。

社内にAI推進役が一人いればいい

これは社内の人材配置にも当てはまります。最近よく耳にするAIエージェントやエージェンティックAI。これらを活用した業務設計ができる人が、社内に一人いれば良いのではないでしょうか。その人が生成AIを使って業務の仕組みを作り、残りの社員はその仕組みに乗っかって「使うだけ」。

想像してみてください。社内で一人が生成AIを駆使して、経費精算の仕組み、データ入力の自動化、社内ツールの構築を進めている。他の社員は、その仕組みの中身を詳しく理解していなくても、日々の業務で普通に使っている。これで全然良いと思いませんか?

ChatGPTに質問して壁打ちするぐらいの使い方なら誰でもできます。でもそこから一歩踏み込んで、業務フローそのものをAIで再設計しようとするなら、社内での役割分担――誰が推進役で、誰がフォロワーか――を考えることが大切です。全員が推進役になる必要はありません。むしろ、推進役が一人いて、残りの人が安心してついていける体制のほうが、組織としてはうまく回ります。

AIを作る部分は専門家に頼るという選択肢

さらに言えば、その作る部分を社内で完結させる必要すらありません。

弊社のこれまでの事例を振り返っても、取引先が自力でアプリを作ろうとして詰まったところを弊社がサポートした、というケースがありました。フロントはClaudeが作ってくれたけど、サーバー構成やデプロイ、メンテナンス性を考慮した設計は弊社が担当したというケースです。

こういった基盤を作る部分だけを外部の専門家に任せて、日常の運用は自社でやるという形は、中小企業にとって非常に合理的な選択肢だと思います。別に弊社でなくても構いません。信頼できるIT会社やフリーランスのエンジニアでも良いと思います。大事なのは、前提知識が必要な部分を無理に自社だけでやろうとしないことです。

中小企業がAI活用で目指すべきは、自分たちで全部作れるようになることではなく、使う側として最大限の恩恵を受けられる体制を整えることなのではないでしょうか。

まとめ

生成AIでアプリを作ったり業務を効率化したりすることが当たり前になりつつあります。しかし、それは誰でもできるという意味ではありません。前提知識がないと、うまく動かなかったり、肝心な部分が抜け落ちたりします。

だからこそ、AI(エージェント)を作ることとAIを使うことを分けて考えましょう。基盤を作る部分は、社内の推進役か外部の専門家に任せる。残りの人は使うことに集中する。ChatGPTでの壁打ち以上のことをやるなら、こうした役割分担が不可欠です。

中小企業は生成AIを活用すべきです。ただし、全員がエンジニアになる必要はありません。仕組みを作る人が一人いて、あとの人はその仕組みを使う。それだけで、十分に大きな効果が得られます。

ではまた次回。

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