小規模なNPOでは、事務局の人数が非常に少なく、経理専任スタッフを置けないことも珍しくありません。当社のサポートで実際に小規模NPO・非営利団体のAIによる業務効率化をしている実例がありますので、今回はその事例のご紹介です。
小規模NPOで普段はそれほど多くの経理処理がなくても、イベントや事業を実施した直後には、会場費、出演料、印刷費、交通費、機材費などの請求書が一度に届きます。
こうした小規模団体では、業務量そのものよりも、短い期間に事務作業が集中することが負担になりがちです。
特に大変なのが、届いた請求書の内容を確認し、支払先、銀行口座、金額、支払期限などを整理し、銀行振込用のデータを作る作業なわけですが、この業務はGoogle DriveやGoogleスプレッドシートとAIを組み合わせることで、相当な部分が効率化できます。
小規模NPOでは請求書の整理だけでも時間がかかる
例えば、ある地域イベントを開催したとします。
イベント終了後、会場を運営する会社、音響会社、出演者、カメラマン、デザイナー、印刷会社などから請求書が届きます。
請求書の届き方も統一されているとは限りません。GmailにPDFが添付されて届く場合もあれば、紙でもらった請求書をスキャンすることもあります。画像形式で送られてくることもあるでしょう。
スタッフはそれらを見ながら、支払先名、金額、支払期限、振込先銀行、支店名、口座種別、口座番号などをエクセルやGoogleスプレッドシートへ入力していきます。
数件であれば大きな問題ではありませんが、イベント終了後に数十件の請求書が集中すると、それだけでかなりの時間が必要になります。
さらに、以前届いた請求書をもう一度入力してしまったり、同じ請求書を複数のスタッフが登録してしまったりすると、二重振込につながる危険もあります。
届いた請求書はまずGoogle Driveに集める
この業務をAIで効率化する場合、ルールはひとつだけ。支払いが必要な請求書はすべてGoogle Driveの決められたフォルダへ保存するという運用だけです。
Gmailに届いたPDFであればGoogle Driveへ保存し、紙の請求書であればスマートフォンなどでスキャンして同じフォルダへ入れます。
小規模な団体では、高機能な経費精算システムを導入するよりも、とりあえず入れるという簡単な運用のほうが定着しやすい場合があると思います。
AIが請求書を読み取りスプレッドシートに整理する
請求書がGoogle Driveに集まったら、週に1回または月に1回など、決められたタイミングでAIに内容を読み取らせます。
そうすると、AIが請求書から必要な情報を抽出し、Googleスプレッドシートへ記録されるようになります。
例えば、次のような管理表を作ることができます。
| 支払先 | 請求書番号 | 請求日 | 支払期限 | 金額 | 銀行名 | 支店名 | 口座種別 | 口座番号 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 株式会社○○音響 | A-20260801 | 2026/8/10 | 2026/8/31 | 88,000円 | ○○銀行 | 渋谷支店 | 普通 | 1234567 |
| ○○デザイン事務所 | 2026-081 | 2026/8/12 | 2026/9/10 | 55,000円 | △△銀行 | 新宿支店 | 普通 | 7654321 |
| 山田太郎 | 0820-01 | 2026/8/20 | 2026/8/31 | 30,000円 | □□銀行 | 中央支店 | 普通 | 2345678 |
重複した請求書がないかAIに確認させる
請求書処理では、入力作業以上に気をつけたいのが二重支払いです。
同じ請求書がGmailと紙の両方で届くこともありますし、複数のスタッフがそれぞれGoogle Driveへ保存してしまうこともあるでしょう。そこでAIを使って、請求書番号、支払先、請求金額、請求日などを比較して、重複している可能性のあるデータを抽出するのです。
例えば、請求書番号が完全に一致している場合だけでなく、「支払先と金額と請求日がすべて同じ」といった条件から重複の可能性を判断することもできます。ただし、AIが自動的に削除するのではなく、この2件は重複している可能性がありますというように、人に知らせる仕組みにしておくほうが安全でしょう。経理業務では、AIに最終判断まで任せるよりも、人が確認するための材料をAIに用意させる設計が向いているのです。
振込用データもAIに作成させる
請求書の情報がGoogleスプレッドシートに整理できれば、そのデータをもとに銀行振込用のファイルを作成できます。
銀行によっては、複数の振込先をまとめて登録できるCSV形式や全銀形式のデータをインポートすることができますので、これを活用しましょう。
法人向けのインターネットバンキングで一括振込用データを読み込める場合には、必要な列や文字コード、データ形式に合わせてAIにファイルを作らせておきます。
仮に請求書が30件ある場合でも、スプレッドシート上で内容を確認した後、一括振込用のデータを作成すれば、銀行側でまとめて登録できるのです
最後の振込実行は人が行う
振込データの作成までAIに任せても、実際の振込実行は人が行う運用が安全です。
AIが作成した振込用データを担当者が確認し、銀行のインターネットバンキングへアップロード。そして、支払先、口座番号、振込金額、振込総額などを確認したうえで、振込を人が実行します。このようにすれば、AIが銀行へ勝手に送金することはなく安心です。
毎日自動化する必要はない
小規模NPOの場合、経理処理をリアルタイムで自動化する必要がないことも多いと思われます。
請求書が届くたびに処理するのではなく、普段はGoogle Driveへ保存するだけにして、毎週金曜日や毎月25日など、決められた日にまとめて処理する方法でも十分でしょう。
むしろ、イベントの開催時期によって業務量に波がある団体では、このほうが運用しやすくなります。AI活用というと、すべてを自動でリアルタイムに処理する仕組みを想像しがちですが、実態に応じて柔軟に設計すれば良いのです。
Google Workspaceを中心にすると運用を変えすぎずに済む
すでにGmailやGoogle Drive、Googleスプレッドシートを利用しているNPOであれば、新しい業務システムを一から覚える必要もありません。
現在行っている業務を大きく変えるのではなく、その間に発生している請求書を読む、内容を転記する、重複を確認する、銀行用のデータを作るという作業をAIに任せるわけです。
まとめ
小規模NPOの経理では、日常的な処理件数はそれほど多くなくても、イベント終了後など特定の時期に請求書と振込業務が集中することがあります。
こうした業務では、請求書を受け取った段階ではGoogle Driveへ保存するだけにし、週に1回や月に1回、AIがまとめて内容を読み取る方法が有効です。
また、AIにお金を動かす判断を任せるのではなく、その前に発生している読み取り、転記、確認、データ作成を任せることで、安全性を保ちながら事務作業を減らすことができます。
少人数で事務局を運営しているNPOほど、人を増やす前に、繰り返し発生している作業をAIに任せられないかという視点で業務を見直すことで、大きな負担軽減につながる可能性があるのです。