官公庁の入札・公募情報をAIで一次判定する方法

官公庁や自治体と取引のある会社なら、入札や公募の情報をこまめにチェックしていると思います。
たとえば印刷会社の場合、自治体の広報誌、事業案内パンフレット、ポスター、チラシ、封筒、冊子、報告書――行政から出る印刷物の種類は実にさまざまです。
しかし、自社に合った案件を拾い出すまでには思った以上に手間がかかります。
入札情報自体はWebで公開されていますが、ひとつのサイトを見ていれば済むわけではありません。国、都道府県、市区町村……それぞれが別々の場所で情報を公開しています。
そこで、入札・公募情報の収集と、自社で対応できそうかどうかの一次判定をAIに任せる仕組みを考えてみました。

入札情報は案件名だけでは判断できない

中央省庁や都道府県、市区町村レベルの入札情報は、それぞれ独自に掲載されています。
ですから、特定の地域で官公庁案件を積極的に受けたい印刷会社は、国の情報だけでなく、営業エリアの自治体サイトも定期的に回る必要があります。
たとえば「令和8年度○○事業報告書印刷業務」という案件が公開されたとしましょう。
案件名だけ見れば「お、印刷案件だ」と目が止まります。でも、本当に受注できるかどうかは、仕様書を読まないとわかりません。
仕様書には、たとえばこんな内容が書かれています。

項目内容の例
印刷物事業報告書
サイズA4判
ページ数120ページ
印刷表紙4色、本文1色
部数15,000部
製本無線綴じ
納期2026年11月30日
納品先県内25か所
その他校正3回、梱包指定あり

自社に大型印刷機がなく、普段は数百~数千部の冊子を中心に受けている会社なら、15,000部という時点で厳しいとなるかもしれません。
部数がクリアできても、県内25か所への仕分け配送が重荷になる場合もあります。
さらに、入札参加資格や所在地要件、過去の受注実績が条件に含まれていることもざらです。

AIに新着案件を読ませて一次判定してもらう

ここをAIエージェントに任せてみます。
まず、自社が定期的にチェックしたい調達サイトを決めます。例えば国の調達情報と、営業エリアの都道府県や市区町村の入札情報です。
新しい案件が公開されたら、案件名、発注機関、公告日、提出期限、仕様書などを自動で取得します。そのうえで、AIに仕様書を読ませます。
AIがチェックするのは、印刷という単語が含まれているかどうかだけではありません。印刷物の種類、サイズ、ページ数、部数、カラー、製本方法、校正回数、納品場所、納期、参加資格――これらを整理します。
整理した結果は、Googleスプレッドシートに溜めていきます。
例えばこんな一覧が作れます。

案件発注者金額・規模締切自社適合度AIの判定
観光パンフレット印刷○○市5,000部9月15日A通常設備で対応可能
事業報告書印刷△△県15,000部9月18日B部数が多いため要確認
広報誌印刷・全戸配送□□市80,000部9月20日C配送条件が自社の対応範囲外
イベントチラシ印刷○○財団3,000部9月25日A過去案件と近く対応可能

担当者は、全案件を最初から読む必要がなくなります。
まず「A」判定の案件を確認し、その後、迷う「B」をチェックする――そんな使い方ができます。

自社の条件もAIに覚えさせる

一次判定を正しく動かすには、AIにあらかじめ自社がどんな仕事を受けられるかを教えておかなければなりません。
例えばGoogleスプレッドシートに、対応可能な印刷サイズ、得意な部数、製本方法、配送可能地域、最低受注金額などを登録しておきます。
過去の受注案件をGoogle Driveに保存しているなら、それらを参考情報として使う手もあります。
AIには新しい入札案件を見つけたとき、仕様書だけではなく、自社の条件と照らし合わせてもらうようにします。
「20,000部だが過去に同規模の案件あり」「特殊な折り加工が必要だが設備的に不可」「印刷自体はできるが納期が通常より短い」――そうした判断理由まで出力させることができます。
最終的に参加するかどうかは人が決めますが、その前段階の調査はかなり削減できるわけです。

締切や必要書類もまとめて管理する

入札案件では、仕事として成立するかに加えて、期限管理も欠かせません。
興味のある案件を見つけても、参加申請の締切を過ぎてしまえばそれまでです。それに、仕様書質問期限、参加表明期限、入札書提出期限など、複数の締切が設定されているケースもあります。
AIに公告や仕様書を読ませる際、こうした日付も同時に抽出してGoogleスプレッドシートに登録しておけば、案件管理がぐっと楽になります。
さらに、Googleカレンダーに自動で締切を入れてもらったり、期限が迫った案件をGmailで担当者に通知する仕組みに発展させることもできます。

まとめ

官公庁や自治体の入札・公募案件を探している企業では、案件を見つけることよりも、それが自社でできる仕事かを見極めるのに時間がかかっています。
印刷会社なら、印刷物の種類、部数、ページ数、製本、納期、納品条件、参加資格――確認すべき項目は少なくありません。しかもそれらは案件名だけではわからず、公告や仕様書を開かないと見えてきません。
そこで、調達情報を定期的に取得し、AIに仕様書を読ませ、自社の設備や過去実績と比較して一次判定させ、結果をGoogleスプレッドシートにまとめる仕組みを作ります。人はAIが候補として挙げた案件を中心に確認し、最終判断を下す。
AIに経営判断を任せるのではなく、大量の情報の中から人が読むべきものを選ばせる。この使い方は、入札情報に限らず、公募、補助金、助成金、営業情報の収集などにも応用できるAIエージェント活用のひとつです。